データ復旧において、初期診断は非常に重要な役割を担います。
初期診断とは、データ復旧の専門家が障害を確認し、復旧可能かどうかを判断する作業のことで、HDDやSSDなどの障害箇所を特定し、復旧費用や復旧期間を算出します。
初期診断において障害状況を正確に把握するためには、HDD・SSDなどのハードウェアの知識、各メーカー独自のファームウェアの知識、OSやファイルシステムの知識など、幅広い分野の深い理解が必要となります。
初期診断の正確さによって、復旧精度が決まります。そのため、データ復旧の専門業者に依頼することが望ましいと言えます。
初期診断の流れについて
データ復旧の初期診断には、機器の解体、1次診断、2次診断の3つのステップがあります。
最初に、機器の解体が行われます。これは、パソコンや外付けHDDから記憶媒体(HDD・SSD)を取り出すことで実施されます。機器の解体時にノートパソコンやデジタルカメラなどから筐体を傷つけずに解体するには専門的な知識と技術が必要になります。
次に、1次診断を行います。1次診断では、物理的な損傷がないかを確認し、物理障害の特定を行います。この診断は専門的なツールを用いて行います。セクタが正常に読み出せるか、PCB(基盤)やHDD内部のパーツに破損がないか調査を行います。
1次診断後に、2次診断が行われます。2次診断では、論理障害の確認とデータの確認を行います。論理障害とは、データが正常に読み込まれない原因となる問題のことです。
たとえば、ファイルシステムの破損やデータの削除が該当します。2次診断では、クラスタのスキャンやファイルシステムの解析を行い、データが検出できるか調査を行います。
以上が、データ復旧の初期診断の大まかな流れです。続いて、1次診断はどんなことをやっているのか、2次診断はどんなことをやっているのかを解説していきます。
1次診断は具体的にどんなことをやっているの?
初期診断の1次診断において、まずはお客様からの問診状況を確認します。
例えば、媒体を落下させてしまった、水に濡らしてしまった、他社に依頼したことがある等の情報は、復旧する上で重要な情報となるため、該当する記載がないか顧客カルテを確認します。
次に、記憶媒体に外的破損(水没の跡や、他社開封痕)が無いかを目視確認します。外的破損がある場合、機器をいきなり復旧用ツールに接続し、通電すると回復困難なダメージを与えてしまう可能性があるため、慎重に診断を行います。
すべてを確認したあとに、物理復旧ツールに記録媒体を接続して、動作確認をします。
HDDの1次診断について
記録媒体の種類によって異なりますが、HDDの場合は物理復旧ツールに接続し、通電させて動作音を確認します。HDD内部のパーツが壊れている場合は音で判断を行いますが、通電の際、異音がある場合は直ちに通電を止め、障害判定を行います(PCB障害、ヘッド障害、モーター障害)
また、スクラッチ(データが保存されるプラッタへの傷)が疑われる場合にはお客様に了承をいただいたうえで、弊社クリーンブースにてHDDを開封し、スクラッチの有無を確認します。
動作音が正常であれば、データアクセスが出来るか試みます。データアクセスが正常でない場合、さらに詳しく調査を行い、障害の特定を行います(ファームウェア障害、バットセクタ、ヘッド障害)。
データアクセスも正常だった場合、物理障害は発生していないと判断し、2次診断に移ります。
SSD、USBメモリ、SDカードの1次診断について
SSD、USBメモリ、SDカードなどフラッシュメディアの場合は、物理復旧ツールに接続し、通電させてデータアクセスが出来るか試みます。データアクセスが正常でない場合、さらに詳しく調査を行い、障害の特定を行います。具体的には、基盤障害、ファームウェア障害、メモリ障害などが特定されます。
一方、データアクセスも正常だった場合、物理障害は発生していないと判断し、2次診断に移ることになります。
2次診断は具体的にどんなことをやっているの?
2次診断は、1次診断で物理的な障害がないと判断された場合に行われる、より詳細な診断作業です。まず、お客様からの問い合わせ内容を確認します。
削除が原因によるデータ損失の場合は、それ以上の状態悪化を防ぐため、診断作業の前に複製ツールを使用してクローンディスクを作成し、クローンディスクを用いてクラスタスキャンなどの論理調査を行います。
その後、検出されたデータの確認を行い、お客様がご希望されているデータの検出ができれば診断作業は終了となります。しかし、検出できない場合は更に高度な解析を行い、それでもデータが検出されない場合は復旧不可として報告します。
一方、削除以外の原因によるデータ損失の場合は、専用の論理ツールに記憶媒体を接続し、ファイルシステムの解析を行います。その後、お客様の希望データが検出できているか確認を行い、データの検出ができれば診断作業は終了となります。
データ復旧で失敗しないために必要な初期診断とは:まとめ
初期診断は、故障の原因を特定し、復旧の可能性を判断するために行われます。初期診断は1次診断と2次診断に分かれ、それぞれに特有の手順があります。
1次診断では、物理的な障害の有無を調べ、データの読み取りが可能か確認します。
2次診断では、データを解析し、お客様の希望するデータが検出できるか確認します。
初期診断によって、復旧の可能性や費用の見積もりが行われるため、お客さまにとって重要な情報となります。しかし、データ復旧業者の中には、簡易な初期診断作業しか行わずに高額な見積もりを出す業者もあるため、複数の業者から見積もりを取り、慎重に比較することも必要です。
また、正確な初期診断のためには、データ復旧に関する知識や技術が必要であるため、安易に自己判断を行わず、専門業者に一度見積りだけでも依頼してみてください。
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